これはおすすめ!「論語と算盤(渋沢栄一著)」美しくなるには知性も必要?名著を読んで心もイケメン!

ビジネス

男女どちらにもいえることですが、魅力的であることは、見た目も大事ですが、出会ったあとも継続的にウィンウィンな人間関係を築くうえで、大切なのは人柄。「人柄はどうしようないでしょ!」と思った方、ちょっと待ってください。

この世の名著を読めば、おのずと魂と感性が磨かれて、心もイケメンになること間違いなしです。

amazonnの売り上げトップ100にランキングするビジネスにも活用出来る書籍をご紹介しましょう。

第一回は、渋沢栄一の「論語と算盤」です。2024年度前半に1万円、5千円、千円の各紙幣が20年ぶりに刷新することになり、1万円札は福沢諭吉から、「日本資本主義の父」渋沢栄一に。

現代のビジネスマンにとって古くて新しい渋沢の名著「論語と算盤」を取り上げます。

商談のときなど、さりげなくネタにすると、「おっ勉強してるね!」と仕事に対する意気込みを感じてもらえるかもしれませんね。

渋沢栄一の代表作である本書は、大蔵省を辞して、国益のために数多くの企業、学校を創設した実業家渋沢栄一(1840~1931)の論語をよりどころとした実践的経営哲学です。

渋沢は、経営の目的は人々を幸福にし、ひいては国を豊かにするものでなくてはならないとし、目先の利益の惑わされることなく、社会の課題を解決することで利益を得る事の重要性を説いています。

渋沢流論語の解釈の特徴は二つあり、儒教は「利(利益)と義(道徳)は両立できない」とされていましたが、渋沢はそれまでの通俗解釈を修正し、道徳経済合一を唱えています。

もう一つは、学問と実際の合一です。つまり、儒教の「学問と実際を別物視」する傾向を批判し、日常生活でその知見を活用すべきと唱えています。

利益の前に倫理を求めるビジネス倫理は、古くは石田梅岩(1665‐1744)からアルフレッド・マーシャル(1842-1924)、P・F・ドラッガー(1909 – 2005)ら多くがその重要性を主張しています。

さらに起業の成功要件においても、倫理を前提とした経営の実証的な研究が行われています。したがって考え方としてはそれほど目新しさや奇抜さはないともいえます。では、なぜ渋沢の「論語と算盤」が今も色褪せず、現代の経営者層に支持されるのでしょうか。

3つの理由が考えられます。ひとつは、ビジネスモデルの新しさです。渋沢の生きた時代は封建時代から近代社会へとの時代の転換期であり、価値観の転換に伴い、既存の価値観に合致したシステムやサービスとの間にギャップが生じていました。

渋沢は産業振興のボトルネックであった資金調達という社会的課題を株式や銀行という日本にはなかった金融システムを導入することで解決しました。

協業を促す場の構築(売り手と買い手を繋げて新しい価値を生み出す)のビジネスモデルはプラットフォームビジネスの定義「誰もが明確な条件で提供を受けられる新商品やサービスの供給を通じて第三者間の取引を活性化させたり新しいビジネスを起こす基盤を提供する役割を私的なビジネスで行っている事」(今井・国領 1994)に該当し、現代のメルカリなどのマッチングビジネスに通じるプラットフォームビジネスの先駆けといえるのではいないでしょうか。

ふたつめは、経営戦略の課題、「いかにして利益を上げるか」の問いに、正面から答えているからといえます。近年、CSRの重要性が叫ばれていますが、中小企業の経営者にとっては「いやいやCSRなんて、大手だけ。もうけてなんぼ」が実際のところですが、「倫理を前提とした経営こそが、長期的な繁栄と利益に貢献する」という渋沢の解答は、寄せ集めの机上の知識によるものではなく、600団体もの創業に携わり、400団体の社会事業に協力した渋沢の独自の経験から導きだされた圧倒的な説得力を持ちます。

最後に、経営に必要な行動規範を個人の資質に求めず、論語に求めた点です。これによって起業や経営は、特別な知識や技術、潤沢な資金を持つ限られた人々のものではなく、人々を幸せに豊かにしたいと願う熱意と野望を持ち、そのため「やりたいこと」がある人たち誰もが、論語を学ぶことで、陥りやすい失敗を犯すことなく経営を行うことができるという経営指南書の役割を果たしています。

中でも示唆に富むのは、起業家と専門経営者との決定的な違いは、「どうしてもやりたいこと」が先にあり、結果として起業家になる。決して起業家になりたくて事業を起すわけでないという点。

そのため起業家を教育によって優秀な経営者に育てることは可能だが、専門経営者を起業家に育てることは難しい(石田 2005)。渋沢は、自身の経験から起業家の成功要件を直感的に感じ取り、なによりも起業に必要な「情熱」を持つ人々を支援する枠組みを整えようとしていたのではないでしょうか。

「論語と算盤」は「人々の幸せのために惜しみなく働くことができるか?」「仕事に情熱をもっているか」「人から信頼されるか」「道徳を守れるか」「事業を継続できるか」等の問いかけによる思考訓練により、今まで自分の中にあった漠然とした事業構想の目的が明確になり、具体的な形を取るようになります。

起業とは楽なものでも、面白おかしいものでもない。むしろ様々な経営の外部環境要因や自分自身の内的要因を客観的に分析し、修正し、事業を継続していかなければなりません。昨今の目まぐるしく変わる経営環境下では失敗する可能性も高い。それでも事業を起す覚悟と情熱があれば、それこそが時代の求める事業であると「論語と算盤」は我々の未知への飛躍に背中を押してくれます。事業を起そうとする人々に対する惜しみないエールこそが本書の魅力であり「論語と算盤」が読み継がれている本当の理由ではないでしょうか。

最後に渋沢は、たとえ仁義道徳を動機として事業を興し、その教えに従って経営したとしても必ずしも成功するものではないと述べています。ただし、その成功・失敗とはその一時の評価にすぎず、偽りのない利他の精神があれば、必ずや評価される、人類の平和・幸せを真に願い、事をなす人々は物事の成功・失敗という刹那的な基準を用いて判断してはならないと述べています。そこに冷徹な実業家としての渋沢の側面と起業するすべての人に対する温かい労りを感じます。

新1万円札に登場、渋沢栄一って誰? – 日経ビジネス