日常の気晴らしやダイエットの甘い誘惑に「NO」と言えれば、より理想の自分に近づき、健康的な人生が送れるとわかっていても、なかなか実行できないという人は多いのではないでしょうか。
実は、この「NO」の言い方を変えるだけで、その実効性が高まるということをご存じでしょうか?
なぜ人間は誘惑に負ける?
人が誘惑に負ける科学的な理由は、一つではありません。スタンフォード大学の心理学者、ケリー・マクゴニガル氏によれば、脳では複数の自己がせめぎ合あっており、脳のストレスや疲れによって、自己抑制力が低下するそう。
また、一度失敗するとその罪悪感から、どうにでもなってしまえと自暴自棄になり、軌道修正可能な段階であっても、コントロールが効かずに、結果的に失敗してしまうなど、誘惑に負ける理由が複数、存在します。
同氏によれば、誘惑に負けない「意志力」は鍛えることが可能で、それには「意識」することがもっとも重要だと述べています。例えば、「食べたい!」と感じた時、本当にそれが自分の望むことか?と冷静に考えてみることだといいます。
簡単な方法で意志の力を鍛えることが出来る!
多くの人は、意識することを、「わかっているけど、できない」と感じているのではないでしょうか?そこで、「意識するための」おすすめの方法を紹介しましょう。
驚くほど簡単で、実効性のある方だです。
まずは『A Scientific Guide to Saying “No”: How to Avoid Temptation and Distraction(科学的ガイドによる、誘惑を退ける言葉の使い方)』の記事から、根拠となるジャーナル・オブ・コンシューマーリサーチの研究内容を説明しよう。
「できません」と「しません」の違い?
研究では、誘惑に直面した時に発する言葉により、学生を2グループに分けます。一つは「私は○○できません」というグループであり、もう一方は「私は、○○しません」というグループです。
具体的には、アイスクリームを見せ、それぞれに「私はアイスクリームを食べることができません」、「私は、アイスクリームを食べません」と、このフレーズを数回、繰り返えしてもらいます。その後、研究とは関係のないアンケートを行い、学生には実験は終了したと伝えます。
実は、ここからが、本当の実験です。アンケート用紙を回収する際、実験参加のお礼として、チョコレートキャンディーバーとグラノーラヘルスバーのどちらかを選べると伝えたところ、「できない」と繰り返したグループは、チョコキャンデーバーを68%の確率で選択し、「しない」と繰り返したグループは36%の確率で選択しました。
つまり、「しない」と繰り返したグループは、使った言葉の影響により、健康を意識した選択を行ったと考えられます。
継続的な効果はある?
しかし、一回きりの誘惑なら、正しい選択をおこなう(食べない)かもしれませんが、継続性が重要な習慣についてはどうでしょうか?
そこで、言葉の使い方が、継続的に意思のコントロールに影響を及ぼすか、実験を行いました。健康に興味を持つ、働く女性30人を対象に、運動を10日間続けてもらい、運動する時に使う言葉で、3つのグループに分けました。
第一グループは、「(運動を)さぼったら、だめ」というグループ、第二グループは、「さぼることはできない」というグループ、第三グループは「さぼりません」というグループです。
最終的に、10日間、最後まで運動を続けることができた人数は、第一グループで3人、第二グループで1人、第三グループでは8人という結果でした。圧倒的に「さぼりません」という言葉を使ったグループの継続率が高いことに。
なぜ「しない」は「できない」より効果的か?
コロンビア大学の動機科学センターのディレクター、ハイディ·グラント氏によれば、「しない」という言葉は、自分の決意であり、意志の肯定、強化となるとのこと。
一方、「できない」は、自らの意思ではなく、外部からの制限となります。そのため「できない」という言葉は、思考力と個人の主体性を奪い、脳のやる気を削ぐと考えられます。
結果、モチベーションを維持できず、誘惑に負けたり、目標を達成できずに挫折してしまうという結果に。
適切な言葉の使用が脳へのフィードバックを強化する
適切な言葉を使うことは、一回きりの、よりよい選択を促すだけでなく、長期的なゴールにも有効のようです。つまり、ケリー氏が指摘しているように「脳に認識させる」には、正しい言葉を使うことが大事。
言葉にすることで、自分自身への励ましと目標を明確にする。また、その影響力は、現在のみならず、繰り返し使うことによって、脳内で強化され、未来の行動をかたち作るといえるでしょう。
言葉は現実化する?
日本には、古来から「言霊(ことだま)」という考えかたがあります。
つまり、言葉には、魂が宿り、良いことを言えば、良い結果となり、悪いことを言えば、悪い結果を招くという、いわゆる、思考の現実化という考えです。
この考え方は、前述の実験結果からも、実は科学的に正しいのかもしれません。母国語を使うとき、あまり意識せずに使ってしまいますが、適切な言葉を継続的に使うことによって、その効果は想像以上のものになるのではないでしょうか。
まとめ
「NO」の言い方を変えることで、悪い習慣を打ち破り、良い習慣を身に着けることができると信じて、声に出して言ってみましょう。自分の行動を意識することで、意思力は鍛えられます。どんなことにも応用できるので、まずは「ダイエット」から始めてみてはどうでしょう。
【参考元】
※ 『A Scientific Guide to Saying “No”: How to Avoid Temptation and Distraction』 – Buffer
※『スタンフォードの自分を変える教室』(2012/10/20) – ケリー・マクゴニガル (著), 神崎 朗子 (翻訳 – )大和書房
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